井土まちづくりレポート第6号

まずは現状を把握!

「第1回井土まちづくり学習会」を開催しました

東日本大震災の津波被災から 11 年が経過した仙台市若林区井土地区。今後の地区運営において大きな課題となっていることの一つに「土地利用」が挙げられます。井土地区は、かつて 103 世帯が暮らす集落でしたが、現在は 11 世帯のみとなっており、宅地だったところは、更地になったり、工事業者の仮設事務所になったりしています。

長期的なまちづくりのイメージを描くためにも、現状の土地利用のあり方を理解した上で、今後の理想像を話し合っていく必要があります。そこで、まずは現状について学習するために、仙台市の出前講座制度を活用した「井土まちづくり学習会」を 6 月 2 日(木)に東六郷コミュニティ・センターにて開催しました。「井土まちづくり学習会」に講師としてお越しくださったのは、仙台市役所の土地利用等に関係する部署の皆さん(仙台市都市整備局都市計画課・開発調整課、経済局農政企画課、若林区役所)です。今回はそのレポートをお届けします。

井土地区は「原則として開発行為が認められていない」

井土地区の土地利用の基本になるのは、都市計画の制度です。仙台市の都市計画区域は、「仙塩広域都市計画区域」として宮城県が指定しており、その中で仙台市が市街化区域と市街化調整区域を指定しています。井土地区は全域が市街化調整区域に指定されており、原則として開発行為は認められていません。

しかしながら、市街化調整区域における開発行為には「例外」があります(都市計画法第 34 条)。たとえば、「分家住宅」と言われる、都市計画区域の線引きの日以前から引き続き現在に至るまで生活の本拠を構えている本家から世帯が分かれて、分家としての世帯が新たに必要とする住宅については開発行為が認められています(都市計画法第 34 条第 1 項第 12 号)。

ほかにも都市計画法第 34 条第 1 項第 11 号に基づいて、仙台市では一般住宅に関して①市街化区域から 2 ㎞以内に位置する、②周辺に 50 戸以上の建物が連続している、③土地が昭和 45 年 8 月以前から地目が「宅地」である、という 3 つの要件をすべて満たす土地のみ建築を認めています。井土地区は上記①②に該当しないため、「第三者による開発行為/新築住宅の取得」ができない状況になっています。

また、市街化調整区域内で農業を営む方の住居の用に供する建築物、いわゆる「農家住宅」についても、都市計画の基本理念である「農林漁業との健全な調和を図る」という観点から、都市計画法の適用除外とされ、開発行為が認められています(都市計画法第 29 条第 1 項第 2 号)。

「農業振興地域制度」とは

そして、井土地区には土地利用に関する「農業振興地域制度」もあります。これは、「農業振興地域の整備に関する法律(以下、「農振法」)」の規定に基づき、総合的に農業の振興を図ることが必要な地域を都道府県知事が指定するものです。指定された農業振興地域の区域内にある市町村は、その区域内の農業振興地域について、農業振興地域整備計画を定めることとされており、原則的に農業以外の目的の利用が制限されている「農用地区域(青地)」を設定しています。

仙台平野が広がる仙台市沿岸地域の大部分が農業振興地域であり、井土地区も農業振興地域内となっています。また、地区内において、国営仙台東ほ場整備の受益地は「農用地区域(青地)」となっており、農業以外の利用について制限されていますが、井土地区の既存集落部分は「その他の区域(白地)」となっており、農振法上の土地利用の制限はありません。

どうしたら宅地跡地を利用できる?

 以上をまとめると、市街化調整区域と農業振興地域に指定されている井土地区は、将来的にも農業が継続して行われるように優良な農地保全がなされており、こうしたエリアにおける一般住宅の開発許可については「分家住宅」もしくは「農家住宅」のみが該当する、ということになります。住民が頭を悩ませているのは「かつて暮らしていた住宅跡地の今後」です。上記のとおりの現状の運用に照らし合わせると、「近隣に農地を所有する農業従事者」等、限られた対象者のみが住宅を構えることが可能で、それ以外の方には「井土に暮らす」ことが困難な状況にあります。よって、このままでは地区の人口は増えず、更地となった宅地の維持管理もますます手間がかかるようになることが予想されます。

規制がある中でできることは?

仙台市の皆さんの説明を受けて、参加者からも質問や意見が相次ぎました。

質問

非常に厳しい規制がある地域だと理解した。ゆくゆくは地区計画の導入も含めて規制緩和を検討したいが、その場合、都市計画法第 34 条の「属人性」は緩和の対象になるか。
※例外的に許可を受けて建築された建築物については「属人性のある建築物」とされ、許可を受けた者以外の者が使用や居住を行うと都市計画法違反となる。農家住宅や分家住宅も「属人性のある建築物」に該当する。

回答

地区計画の決定がなされれば、地区計画の内容が優先されるため、属人性は解除される。ただし、「地区計画に伴う属人性解除によるまちづくり」というのが、市街化区域の拡大と変わらないものになる恐れもあり、仙台市として推進するのは難しいと考えている。

しかしながら、仙台市としても市街化調整区域のあり方や沿岸部地域の今後については考えていく必要があると捉えている。住民の皆さんが考えることと並行して、仙台市でも検討を重ね、ともに協議できるようになりたいと思っている。

質問

井土地区の状況をどのように把握されているのか。都市計画マスタープランで説明されている「集落・田園・里山ゾーン」というゾーニングで、どういうことが可能なのか。

回答

住民側の意向を踏まえないまま、井土地区をこうしていきたいということは、仙台市としては現時点ではない。ただ、集会所も整備されて、市民協働推進課の補助金による活動も始めていると聞いている。そういうところから地域の話し合いが始まっていくことを期待しているところである。

これまで説明したとおり、市街化調整区域であり、住宅が建てられないことへの不安も分かる。仙台市で行っている、まちづくり支援専門家派遣制度なども活用し、住民の皆さん同士でどういったことをやりたいのかを話し合い、整理して、「こういう街をつくっていく」ということをするのが一番の近道だと思う。おそらく、おなじ地区の方でもそれぞれのお考えがあると思う。それは地区の中で腹を割って話していただくしかないと思う。

仙台市としては、都市計画マスタープランで説明させていただいているとおり、「農業振興をしながら、農家の方を守っていく」という方針である。しかしながら、住民の皆さんとしては「地域振興のために」という思いもあると思うので、そのあたりは、ともに話し合いを重ねながら進めていきたいと考えている。

意見

都市計画法、農地法、農振法で雁字搦めの土地である。こうした状況の中で住民の不安は「残った宅地をどうしようか」ということ。長期的な展望も描けない。規制があるために何もできない状況に対して、行政のほうからも規制緩和につながるような手法について一緒に考えてほしい。そうすれは、私たちも考えやすくなる。

放っておくと、不法な使われ方をされるのではないかという心配もある。そうなると、ますます相続したくなくなるし、今住んでいる人たちも困る。

意見

もともと井土の海岸近くには舟溜まりがあって、潮位を調節する役割を担っていた。そのそばには芝生の公園があって、東屋も設置されており、農繁期が終わる頃にはそこで打ち上げをしたりした。住民はよく行っていたので、海浜エリアの活性化に合わせて原状復帰できないかと思っている。八坂神社までの参道も、今は草がぼうぼうに生えている。かつてあった住民の憩いの場が復活して、また交流やにぎわいが生まれてほしいという思いがある。

今回の学習会は、井土地区の土地利用について理解できただけでなく、今抱えている課題を住民同士で共有する機会にもなりました。お互いの意見を聞きながら、今後のまちづくりについてそれぞれに考えたこともあると思います。井土町内会および井土まちづくり推進委員会では、今後も「井土のこれから」について住民の皆さんとともに話し合える場面を作っていきたいと考えています。

今回の学習会を開催するにあたってご説明くださった仙台市の皆さん、ありがとうございました!

毎月 11 日にクリーン作戦を実施しています!

今年の 5 月から、東日本大震災の月命日にあたる毎月11 日に、井土地区内のクリーン作戦を始めています。6月 11 日は土曜日と重なったこともあり、多くの方にご参加いただきました。かさ上げ道路沿いに捨てられているごみの収集だけでなく、集会所前の慰霊碑を磨いたり、プランターに花を植えて町内の各所に設置したり、盛りだくさんの 1 時間でした。

引き続き毎月 11 日に開催しますので、ぜひご参加ください!

クリーン作戦実施!

7月11日(月)9時~10時

軍手をお持ちいただき、井土集会所に集合していただくよう、お願いいたします。

クリーン作戦&学習会の振り返り&BBQ!

8月11日(祝・木)9時~13時

クリーン作戦の後、10 時よりまちづくり学習会の振り返りを行います。改めて課題を共有しながら、皆さんからご意見を頂きたいと思います。終わった後は、BBQ を楽しみましょう!

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